「何を言って…!」


「疑うならお祖父様に電話してみようよ」


そう言って、この人は携帯電話を取り出してどこかに掛け出した。


そして、それは直ぐに繋がる。


「あ、もしもし。お世話になっております、真田です。……ああ、その件で、和佳菜が信じられないってばかり言うので」


嘘でしょう?


まさか、この人、お祖父様のプライベートナンバーまで知っているの?


祖父は仕事用と、プライベート用を完全にわけている。


仕事用の電話は滅多に出ないと言われているが、プライベートの電話はすぐに出てくれる。


要はこれは。


完全なるプライベートだ。


はい、と言ってこの男が携帯電話を手渡してきた。


「…もしもし、お電話代わりました、和佳菜です」


「おお、和佳菜。元気にしていたか?」


「…お祖父様、これは一体どういうことですか?」


貴方、また失敗でもするつもり?


「まあ、そう怒るな。昌葉くんはいい子じゃろ?」


「いい子?どこが」


そう言えば、目の前の男が胸の先端を摘んだ。


「…っぁ…!」


思わず声が洩れてしまう。


『和佳菜?』


「それ以上いうなら、キミの声をお祖父様にたっぷり聞いてもらうことになるけどいい?」


悪魔だ。


耳元で囁く悪魔がここにいる。


「…マークの時だって、あたしが攫われたのは、間違えなく貴方の不注意が原因だと思うのですが、そこについてはなんとも思わないのですか?」


「さあ…?なんのことを言っているのかワシには分からんなあ」


「何をっ…!」


惚けるのもほどほどにしてほしい。


やっぱり、この人の目的は会社の利益だ。


…あたしにこれっぽっちも愛情なんかない。


「ワシが、お前を自由にしたのは18までだ。これからは言うことを聞いてもらう。残り数ヶ月を楽しむんだな。…ああ、お前の誕生日を入籍の日にしようという話になってる。帰ってこないと…その時は分かっているな?」


それはもう脅しではないか。


あたしの大事な仲間を。


傷つけるという意味ではないか。


「…ママが言うこと聞かなかったからって横暴ね」


「…っ、お前っ!その口の利き方はなんだ!」


「あたし、知っているのよ。その偉そうな言葉遣いのせいでおばあさまがおうちに帰ってこないのを」


祖父母は、あたしが12、3歳の頃に別居した。


離婚までいっていないのは、離婚歴をつけたくないお祖父様へのおばあさまの優しさが故だ。


「人を道具だと思うの、いい加減にやめた方がいいんじゃない?」



_______貴方の思う通りにことが進むと思ったら大間違いなのよ。