「乗ってくれると思っていたよ」


彼はあたしの隣に座ってにこやかに微笑んでいる。


ガタリ、と僅かに揺れながら走る車の中でもあたしは隣の黒スーツを着た男に銃口を当てられている。


要は黒スーツと、真田にあたしは挟まれたカタチで座っている。


余計なことはできないようだ。



「…あたしの過去なんか全部知ってるから、わざとあのような選択を迫ったのでしょう」


「正解。だってキミ、死ぬのはどうでもいいでしょ」


下ろしていいよ、と真田が黒スーツに言った。


狼狽えた彼はでも…、と口を挟んだがゆるりと上がった口角は下がらない。


「だって、この子は今殺ろされたって、なんとも思わないんだから」


そう。


彼はあたしの過去を知っているから、あたしが何に弱いかも見抜いているのだ。


「…」


「この子はねえ?仲間の前で死ぬのが怖いんだよ。…自分のせいで誰かが死んだり、死ぬのを見た人間がどれだけショックを受けるか知ってるの。…そんなカワイイ、キレイゴトで他人が関わる死への恐怖がきっと誰よりも強い」


冷めた目であたしを見る。


あたしは変わらず彼を見つめる。


「そのくせ、自分は死への恐怖が薄いから怖いんだよ。だから今殺したって、なんの価値にもない」


ほんと、あたしの全てを知ってるみたいに語るのね。


「あたしも、知ってるの。貴方は今は、あたしのことを殺さないって」


だって、彼にとって今は話す時間。


望まぬ戦はしないはずだ。



彼はフッと、楽しげに目を細めた。


「キミも随分と、戦い方を知っているようだ」


「聴きたいことがあるのでしょう?何から話せばいいの?」


「…俺のこと、どこまで知ってるか聞きたかったんだよ」


なんだ、それだけのことか。



「貴方がルカ・シェードの隠し子だったってこととか?」