蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



「…知らない」



呟いた言葉は、多分佐々木さんにさえ届かなかった気がする。



「知らない知らない!そんなの知らない!僕は…ぼくは!何も知らない!」


パァンと一発、金色の弾が天井へと打ち上げられた。


そして、カチャリ、と向けられた黒い塊は。


簡単に人を殺せる武器だ。


「和佳菜!」


仁が叫んだのを耳は受け取った。


だけど彼の方へと、目は向けられなかった。


この男から目を離せばその時。


確実に死ぬって、本能で悟ったからに違いない。


「来い!」


この人は知っているんだ。


あたしをとても大切に思っている仲間が。


あたしに銃を向ければ動けなくなることを。


両手を挙げて、ゆっくりと近づく。


「和佳菜!」


仁の声がまた聴こえる。


「そのまま、両膝をつけ」


右、左、と降ろした。


立ち膝をしたあたしに、男はほくそ笑んだ。


「そのまま伏せろ」


それはもう、降参のポーズだった。


「君の探偵ごっこはもうおしまいだ」


ぐいっと、自慢の黒髪を引き上げられる。


痛い、声が出ない。


「…っ」


「僕がどうして君の質問に正直に答えたか知ってる?」


「…いいえ」


「ここで全てを終わらせる為だよ。キミさえ居なくなれば、全てが丸く収まる」



「なんで…っ、あたしを?」



「僕に殺された人間は地獄に堕ちるんだって」


「…ぇっ?」


「マーク様は部下にやらせたから僕じゃない。でも、…僕のマーク様を奪った張本人には、地獄に堕ちてもらわなきゃでしょう?」



クスリ、と笑ったこの男は。



「サヨナラ」