「…あなたは」
デイビッドが振り返った先に立っていたのは、ひとりの男の人だった。
「もう覚えていないかな?わたしも随分歳をとったものだね」
「…ほんとうに」
まさかその人が。
「ああ、そうだよ。佐々木 慎之助。君の兄だ」
Margaretの店主、佐々木 慎之助だとこの場にいる誰が想像しただろうか。
「お、…お前が」
「そうだよ。なに?お前の記憶の中に俺はいなかったか?」
彼はぐっと眉を顰めていたが。
何を思い出したのか、はっと、目を見開いた。
そして、ぐん、とディビッドは襟を掴んで佐々木さんを引き寄せた。
「…思い出した。お前、庭師としてスティーブン邸に来てただろ。僕のこと怪しんでたのも知ってた。sugar に入れたのは僕だけだもんね」
そう。
あたしは大切なことを忘れていたのだ。
Sugarとはあたしとマークしか入れない秘密の空間だった。
しかし、たったひとりだけ例外となる人物が存在したのだ。
「ディビッド、貴方はあの花達の管理を任されていたのよね。マークはsugarのことについてはあたしには何もしなくていいとよく言っていたのはそのせいだったのね」
デイビッドが花に水やったり、肥料をやったり、植え替えていたことをあたしは知っていた。
でも、それは彼の仕事の一部でしかなかったから。
そんなに長く止まっているとは思ってもいなかったのだ。
実際、植え替えにはかなりの時間がかかるし、なにより。
「貴方がよくsugarにいたのをあたし、ようやく思い出したの」
何をするでもない日でも。
彼は暇さえ有ればsugarに足を運んでいた。
その証拠に何度もあたしはsugarの中でディビッドと鉢合わせていたわ。
あたし同様、彼にとってもお気に入りの場所だったのだろう。
「sugarはマーク様のご要望に応えて作ることになったんだよ」



