「なんて声を掛けたの?」


あまりの表情だったので、仁にそう聞いてみたところ。

「ん?和佳菜に関わったら命ねえよって言っただけ」

カラッと笑った仁が物凄く恐ろしいことを言い出したので。


「あんたの方がずっと怖いことをしているじゃない」


少しだけ笑ってしまった。



いつの間にか、心臓のへんな音は収まっていて。



小さく一人で安心した。



「俺はいーんですー。族の総長してんだから。お前はもうちょい頼れ。一人でどうにかできないこともあるだろ」



「頼ってるでしょ」


「どこがだよ。さっきのやつらは、お前のあの程度の睨みでなんとかなったけど、みんなそうだとは限らねえぞ」


知ってる。

分かっている。


それで何度か嫌な目に遭ったこともあるから、対処法くらい承知済みだ。



「ご忠告どうもー」



「素直に心配してくれてありがとうでも、言ったらいいのに」



「素直じゃなくて、悪かったわね」