ピッと、音が鳴って、それは始まった。
《やめるって、どういうこと?》
最初に聞こえたのは、ディビッドの声。
焦って、何かに迫るような声。
《どういうこと、とかない。俺は俺のやり方でやらせてもらうよ。君とはさよならだ》
《何言ってる!実質、今の仕事をやってるのは僕だよ!君が今さら…》
《できるよ。別に何も考えずにお前の指示に従ってたわけじゃない。ちゃんと経験として積んできた。今の俺ならできる》
《馬鹿げてる!僕がいなきゃ何もできないに決まってる!お前が17の時から、右も左も分からない時から側にいたのは僕だろう!?》
《それは感謝してる。でも、俺はもう23になる。毎回仕事だの、なんだのでいちいち俺の側につこうとしないでくれ。お前にお守りなんかしてもらう必要は無いんだよ》
《…マーク様。貴方は、わかってない!俺がどれだけ大切な存在か》
《…なんとでも言えばいい。お前に縛られて生きるのはもう懲り懲りだ》
陰で聞いているみんなは分からないだろう。
これらは全て英語での会話だから。
でも、あたしとディビッド。
この2人に分かれば今はそれでいいのだ。
《じゃあ、ワカナに黙って女とヤッたって言ってもいいわけだね》
だからこの言葉も、きっとみんなは分からない。
この言葉がどれだけあたしを傷つけたのかを。



