「はっ?」
「あら、貴方も知らないフリが好きなのね。あたしのこと言えないじゃない」
くすくす笑うと、ディビットは呆れたように首を横に振った。
「…相変わらず突然ぶっ込んでくるの、得意だよね。別に知らないフリしてるわけじゃない。ただ、そこまでわかってることにちょっと驚いただけ。高校生を舐めちゃダメだね」
「あたし、高校生じゃないわ。大学も出てる。それに、ここにいるみんなも高校生の括りで収められる頭脳じゃない」
自覚的怠惰な人間は多いけど。
物事を推理する能力、考えた上で実践していく能力。
どれをとっても大人には劣らない。
「うん、…まあそういうことにしておいてあげる。まさか、マーク様殺したのまでバレるとはなあ。だって、まだ警察にもバレてないんだよ。国外逃亡したのさえ、ね」
「ほんと、舐め腐っているのね」
「別に?警察を舐めてなんかいないよ。彼らは一生懸命やってる。褒め称えているよ」
「それが舐めているって言ってるのよ」
「…まあ、彼らにはわからないようにしょうこは残さず消したよ。どこで僕だって見抜いたの?」
「マークよ」
「は?」
「マークが教えてくれたの」
あたしは、足元にあった缶からあるものを取り出した。
「それは?」
「彼が残したもの。これは何だと思う?」
あたしが手に取ったのは。
録音機。
ディビットがカッと目を見開いた。
「あいつ…!」
やっぱり知らなかった。
「すべての会話はこの中に」



