「約束…?」


「あいつがスティーブン家(うち)にきた時にはすでに、僕はあいつがスパイだって見抜いていたんだよ。だから取引をした。あの男を殺す手伝いをさせる。そのかわり命だけは助けてあげるってね」


「そんなことが…」


「本当は君に催涙スプレーをかけて、他のホテルまで移動させるはずだったんだ。それがあいつ、最後の最後に反抗しやがった」


「…え?」


「君達が泊まる同じ階を借りて、そこに連れ込んだ。あいつも君も、仲間に逮捕させるつもりだったんだよ。多分ね。もう死んだから真実は分からないけど」


始めから、その魂胆で進めていたのか。


だから、救助隊と称した彼らが来るのは早かった。


だけどホテルは燃えた。


ああ。


ある意味、燃やしたのがずっと正しいわね。




警察の汚いやり方を隠す為に。




「ああ、君の前で繰り広げられた電話の会話は嘘だからね。相手は僕だし、あいつの一方的な演技だった。だからいらないなんて言ってないよ」


「そう、なのね…」


その言葉に息をついたなんて言わない。


ちょっと嬉しかったなんて、絶対に言わない。




「うん、大丈夫」


「素直な貴方なら、…きっとあたしが望んでいることを教えてくれるわよね?」


「…ものによる、かな」




「じゃあ、…マークを殺したのはどうして、というのは?」