0時。
1月の終わりはまだまだ寒い。
コートに身を包んだあたしはその人が来るのを静かに待っていた。
[君ひとり?]
そこへ堂々と、貴方は現れた。
「ようこそ」
暗がりから現れたその人にあたしは微笑んだ。
[相変わらず綺麗だね]
「英語なんて使わないでちょうだい。どうせ日本語喋れるんでしょう?」
まるで自ら捕まりに来るかのように。
予定の時刻ちょうどに現れた。
「…あー、バレちゃったかあ。なあんだ。つまんないね。その感じだともう、俺が全て仕組んだことって分かってるね」
「もちろん」
「どうやって知った?」
彼は愉しそうにくつつ、と笑う。
「…そう、ね。その前に少し昔のお話をしましょうよ」
たわいもない、あたしの話。
「話?」
「ええ、そうよ。そこまで焦る必要は無いと思うの。夜は長いのだし」
そう言えば、彼はクスリと笑った。
「いいよ。そうだね、夜は長いもんね」
さあ、おはなしを始めましょう。
「マークの側近のディビッド様、まずは」
“蓮が死んだあの日の話から”



