「てか、なんでこんなパーティーすることになったんすか?」
飾りつけという名の準備をしながら、三郷に聞かれて、あたしは苦笑いを浮かべた。
「今日はお客様が来るの」
「お客様?あの方を丁寧にもてなすんですか?」
「ええ。…簡単にはいかないでしょうけど」
「本当にきますかね?」
「来るわ…。手紙の送り主がそう言ったのだもの」
今宵。
彼の為に最高のもてなしをする。
ふふっと、笑うと三郷が顔を歪めた。
「こんな危機が迫ってるのに。どれだけ余裕があるんですか」
「余裕なんてないわよ。やることは全てやったわ。今日は楽しみましょう」
「だからそんなこと言えるの和佳菜さんだけですって。…あー、そういえば、綾さんは?先週から見かけませんけど」
綾のことを、彼はあまり口に出さないようにしていた。
何故かは分かる。
あたしに気を遣っていてくれたのだろう。
「綾は…そうね。すぐ来ると思うわ。彼にも色々手伝って貰っているから」
「そうなんですね。たしかに…綾さんは陰の人と行動を共にすることが多かったですし」
彼らにはそう見えていたのか。
やっぱり見えていなかったのは、あたし達だけだったのね。
「三郷はこれが終わったら配置に着いてね」
「分かりました」
「作戦通りに」
「…はい」
あたし達は、下っぱの子達に綾のこれまでの行いを知らせていなかった。
理由は一つ。
こんなところであたし達の絆を歪めることなど許されないからだ。
これが吉と出るか、凶と出るか。
あたしにとっては正直賭けなんだ。
最悪の事態が起こった場合。
彼らが現実を受け止め切れるか、あたしは分からなかった。
それでも信じて、あたしは。
本日の宿敵が現れることを望んだ。