仁が呆れたようにあたしを見ていた。


奥にはまだ彼女が並んでいて、仁が一人できたのがわかる。


「そいつら怖がってんだろ。こんなとこで殺気出すなよ」


「…あたしをナンパしようとした罰よ」


そんなことを言えば、仁はくつくつと笑って、言った。

「ほんと、お前に正義のヒーローはいらねえよな」


「なんの話?」


正義のヒーローですって?



幼い子が好きな戦隊ものの話でもしているのかしら?




「少しは頼れって話」




仁は真顔でそういうと、ナンパ男達に何やら声を掛けていた。



心臓がなぜかキュッと痛くなる。


病気的な何かではないのに、それを境になぜかドクドクと音を立てて、心臓が騒ぎ出す。


何が、起こっているの?


自分でもよくわからなかった。


必死に落ち付けようと、胸に手を当てるが、さほど効果は得られない。


なんで、どうして?


よくわからない何かに振り回されたせいで、あたしはぼんやりと仁と彼らのやりとりまでは聞き取ることができず、ただぼんやりと見ていたのだが。


しばらくすると、あたしに見せた以上の恐ろしさを感じたのか、彼らはそそくさとどこかへ行ってしまった。