「…っそうだよ!俺だよ。でも、…先に裏切ってたのはお前らの方じゃねえか!」


「裏切ったって?あたし達が何をしたと?」


「俺はいつも辛かった。…ずっとずっと辛かった!和佳菜が来る前から、仁は仕事に出ちまうし、悠人はゲームばっかだし、翔は勝手に病んでるし、後輩はなんかあると自分で考えもしないで、俺を頼ってくる。…お前らだって!みんなみんな困った時、疲れた時、全部俺に頼ってきた。丸投げだったじゃねえかよ!」


しん、と静まり返るこの部屋の空気は異様に重かった。


「…なんで、…なんで!さあ!…俺ばっかり」


「ごめん」


最初にそう言ったのは、仁だった。


「は…?」


「気づかなくて、お前の辛さ分かってあげられなくてごめん」


「…今更、全部遅いんだ!もう、何もかも遅いんだよ!」



シンと静まりかえるこの部屋の空気に、あたしはひとつ疑問が残った。


「どうして言わないの…?」


あたしは純粋に不思議だった。


どうして被害者みたいな顔を、綾がするのか。


気がつけなかったのが悪い?


ちゃんと見ていないのが悪い?


そうじゃない、そんなわけない。



絶対に、綾だけが悪いとか、仁達だけが悪いとか、そういったことは無いのだ。




「辛いなら、苦しいなら、不安でしかたないなら!助けてって言いなさいよ!あのねえ!察しろとか、分かってくれるとか。そーんなにみんなあんただけに構ってあげられないの!言いたいことがあるなら、今全部ぶつけなさいよ」


黙りこくった綾に、あたしは容赦なく罵声を浴びせた。



「仲間でしょう!?」


ハッと、顔を上げたのは綾だけじゃなかった。