「んじゃ、邪魔する。なんか進展あったらよろしく」



「ねえ、待って。琢磨」


あたしはこの時、どうしても確認したいことがあった。


「なんだよ」


「…見送るわ」


そう言って、あたしは彼らと共に幹部室を出た。


「んで、なに?」


別れ際、振り返った琢磨にニヤリと笑う。


「よく分かったわね」


「あいつらの前で聞きにくいことなんだろ」


「ええ。あのね、確認したいことがあるの」








「…ただいま」


「おかえり、和佳菜」


翔に微笑んだ後。


バタン、とドアが閉まる音がした。


そして、あたしは。


たったひとりの男を見つめていた。


「…貴方が知ってた事実と寸分も狂いはなかった?…綾」


あたしの目を見ない綾。


ずっと下を向いて、黙る綾。


「貴方がどう聞かされていたのかは知らない。獅獣に対して誰よりも愛が深い貴方の心に誰が悪さをした?答えて、綾」


疑いたくない。


それでも。


貴方を疑わなくてはいけない。


「…なんで俺って、決めつけるんだよ」


弱々しく出た言葉は、あまりに惨めだった。


「俺じゃない!…俺は、ここが1番大事なんだよ。そんな自分で、そんなこと…するわけねぇだろ!」


「あたしだって疑いたくないわよ!貴方じゃなくても!……貴方じゃなくても、ここにいる人達の中に裏切り者がいるなんて思いたくもなかったわよ!…だから…だから。聞きに行ったの」


「は?」


確かめたくて。


あたしは手段を選べない、残酷な女だ。


「みんなにまだ言ってないことがあるの。昨日あたしは別に風邪を引いてなんかいない。2人で話し合った。…それから、2人でマーガレットに行った」


「マーガレットって」


「兄さんがいるとこじゃん…」


やっぱり悠人は突き止めていたのね。


「そう。瑞樹と佐々木さんに会ってきた」


「でもっ!そんな連絡は…!」


「入っていないでしょう?」


目を見開いた綾に。


あたしは更なる現実を突きつけられた。


ああ、やっぱり、と。


「瑞樹に事前に頼んだおいたの。…防犯カメラがハックされないように、先にウイルス仕込んでおいて、と」


これで誰が犯人かもはっきりした。



「白い仮面をした悪魔の手下は貴方ね、綾」