ああ、やっちゃった。
普通に生きてる人には、なにもしないようにしていたのに。
少しだけ、声を低くするだけで随分と印象は変わるものだ。
その証拠が彼らの表情である。
「…お前、なにもんだよっ!」
余裕そうだった彼らの表情は途端に歪み、眉根を寄せて、怯え始めた。
「どこにでもいるただの女ですけど」
うん、わかる。
怖いんでしょ、あたしが。
当たり前じゃない、怖がらせるつもりなんだもの。
「んなわけねえじゃんっ……!なんだよ、ただもんじゃねえだろ!」
「じゃあ、あんた達がそれを知ってどうなる。あたしになんの利益ももたらさないであろう、あんたらにしゃべってあたしにいいことがあるなら教えてよ」
キッと睨み、僅かに彼らと距離を置いた。
その時。
「和佳菜、そこら辺にしとけ」



