そういうと、みんな目を見開いた。
このような情報は、外部には流れないからね。
こんなことをする人間、どう考えたってマークしかいない。
あたしはそう思った時、もっとマークに従っておけばよかったって思った。
そうすれば、蓮もあたしもこんな目には遭わなかったのだから。
「ずっとあたしはその時から。マークを恨んで生きてきた」
だけど、あたしはここで一つ思い出したことがある。
それはあたしと瑞樹がマークの葬式の為にアメリカに飛んだ時にスティーブンご夫妻によって聞かされた話。
『マークはあの日。貴方を見捨ててはいなかった。現に、そう指示したのはあいつではない』
『何をもって、そう言えるのですか?』
『貴女と泊まる為にあいつは必死に仕事していた。普段貴女との時間が取れないことを悔やんでいた。そんなあいつが今日仕事を入れるはずない』
『じゃあ、なんだったって言うんですか?』
『脅し、だよ』
『は?』
『ずっと脅されていた、ある人物のせいだよ』
『じゃあ、その人がどなたか、ご存知なんですね?』
『いや…それは』
『あたしがその言葉を聞いて信じると思っているんですか?』
『…証拠、って言うには、足りないとは思うけど。でも、ここに全てが詰まってる』
そう言って、取り出したのは一冊のファイルと、…。
『缶…?』
『ああ、こっちは何かあったら和佳菜に渡してくれってマークが』
『拝見してもよろしいでしょうか?』
『…ああ』
「あたしね、ずっとマークの指示で動いているって思っていたの。でも、マークの葬式に行った時、そのマークが誰かに脅されていることを知ったの」
あたしの前でも一度だけ見せたことのある怯えた目。
あたしの部屋に来た時にしたその目は。
何かに恐れていた。



