蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



そういうと、みんな目を見開いた。


このような情報は、外部には流れないからね。


こんなことをする人間、どう考えたってマークしかいない。


あたしはそう思った時、もっとマークに従っておけばよかったって思った。


そうすれば、蓮もあたしもこんな目には遭わなかったのだから。


「ずっとあたしはその時から。マークを恨んで生きてきた」


だけど、あたしはここで一つ思い出したことがある。


それはあたしと瑞樹がマークの葬式の為にアメリカに飛んだ時にスティーブンご夫妻によって聞かされた話。


『マークはあの日。貴方を見捨ててはいなかった。現に、そう指示したのはあいつではない』


『何をもって、そう言えるのですか?』


『貴女と泊まる為にあいつは必死に仕事していた。普段貴女との時間が取れないことを悔やんでいた。そんなあいつが今日仕事を入れるはずない』


『じゃあ、なんだったって言うんですか?』


『脅し、だよ』


『は?』


『ずっと脅されていた、ある人物のせいだよ』


『じゃあ、その人がどなたか、ご存知なんですね?』


『いや…それは』


『あたしがその言葉を聞いて信じると思っているんですか?』


『…証拠、って言うには、足りないとは思うけど。でも、ここに全てが詰まってる』


そう言って、取り出したのは一冊のファイルと、…。


『缶…?』


『ああ、こっちは何かあったら和佳菜に渡してくれってマークが』


『拝見してもよろしいでしょうか?』


『…ああ』


「あたしね、ずっとマークの指示で動いているって思っていたの。でも、マークの葬式に行った時、そのマークが誰かに脅されていることを知ったの」


あたしの前でも一度だけ見せたことのある怯えた目。


あたしの部屋に来た時にしたその目は。


何かに恐れていた。