蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



だけど、あたしは本当に運が良かったの。


「そのとき、部屋のドアが開いたの。…優しい声が、した、の」


「…それって」


翔は期待したように目を輝かせた。


だけど、きっと、翔が想像している人じゃないわ。


「男は咄嗟に発砲した。つんざくような煩い音に、あたしは顔を顰めてしまったけど、[彼]はそんなことなかった」


冷静な[彼]は、発砲を予測していたように思えた。


その発砲の瞬間脇に潜り込んで、あったいう間に男ひとりを倒してしまった。





『和佳菜様、遅くなり申し訳ありません』



あれはもう、忘れられない。



『今、縄を解きますね』



跪いて、手首の縄を解こうとした瞬間に抱きついてしまった。


『和佳菜…っ様…?』


『怖かった。怖かった…』



その時の[彼]はあたしの王子様だった。



「冷静に彼は助けだしてくれた。…その時、思ったの」


マークじゃない、あたしが愛しているのは。



「あたしが愛していたのは、蓮なんだって」