だけど、あたしは本当に運が良かったの。
「そのとき、部屋のドアが開いたの。…優しい声が、した、の」
「…それって」
翔は期待したように目を輝かせた。
だけど、きっと、翔が想像している人じゃないわ。
「男は咄嗟に発砲した。つんざくような煩い音に、あたしは顔を顰めてしまったけど、[彼]はそんなことなかった」
冷静な[彼]は、発砲を予測していたように思えた。
その発砲の瞬間脇に潜り込んで、あったいう間に男ひとりを倒してしまった。
『和佳菜様、遅くなり申し訳ありません』
あれはもう、忘れられない。
『今、縄を解きますね』
跪いて、手首の縄を解こうとした瞬間に抱きついてしまった。
『和佳菜…っ様…?』
『怖かった。怖かった…』
その時の[彼]はあたしの王子様だった。
「冷静に彼は助けだしてくれた。…その時、思ったの」
マークじゃない、あたしが愛しているのは。
「あたしが愛していたのは、蓮なんだって」



