蒼の花と荒れる野獣Ⅱ





「…琢磨!」


「そーだよ。あー痛い痛い。ガキは俺のこと知らねってか。正面から入ったら右に一発入れられそうになった。避けたけど!後でボッコボコにしてやる」


「琢磨さん!どうして」


仁が慌てて手を腰に添えた。


琢磨は見るからに痛そうではないのだが。


顔はやや引き攣っているように感じる。


「そりゃ可愛い姪がこっちに来てるって聞いたら、会わなきゃいけねえだろ」


「でも、琢磨は!やることがあるって。それが終わったってこと?」


「逆だね」


その時また扉が開いて。


「…琢磨、置いてくなよ」


「昌さん!千歳兄ちゃんに、勝哉に翔真まで!」


昌さんがにっこり微笑んで。



「俺らは協力してって頼みに来たんだ」


そう、何気なく言った。



「12代目が全員集合なんて、ヤバくね?どうしたんすか?」


綾の驚いた声を見事にスルーして、昌さんがあたりを見回しながらこう言った。


「…うーん。いろいろとっ散らかってるね。その感じだと、和佳菜、まだ何にも話してなかったの?」


「…ええ」


「蓮のこと。簡単に話せることじゃないって分かってるけどさ。それでも、和佳菜は悪くないんだから」


「でも、和佳菜はさっき蓮さんのこと、殺したって」


「事情があるの。そうだろ?和佳菜」


「…昌さんは、何もかも全て知っているの?」


「全部とは言い切れないかな。ホテル火災が起きたあの日のことを全て知っているのは、蓮と和佳菜。2人だけでしょ?」


本当はそれだけじゃない。


他にも真実を知っている人がいるの。


ただ、言えない状態に追い込まれているか。


それとも。



もう、一生言葉にできないか。


2択だ。


だから、真実は。



きっとあたしが語らない限りわからない。