「…琢磨!」
「そーだよ。あー痛い痛い。ガキは俺のこと知らねってか。正面から入ったら右に一発入れられそうになった。避けたけど!後でボッコボコにしてやる」
「琢磨さん!どうして」
仁が慌てて手を腰に添えた。
琢磨は見るからに痛そうではないのだが。
顔はやや引き攣っているように感じる。
「そりゃ可愛い姪がこっちに来てるって聞いたら、会わなきゃいけねえだろ」
「でも、琢磨は!やることがあるって。それが終わったってこと?」
「逆だね」
その時また扉が開いて。
「…琢磨、置いてくなよ」
「昌さん!千歳兄ちゃんに、勝哉に翔真まで!」
昌さんがにっこり微笑んで。
「俺らは協力してって頼みに来たんだ」
そう、何気なく言った。
「12代目が全員集合なんて、ヤバくね?どうしたんすか?」
綾の驚いた声を見事にスルーして、昌さんがあたりを見回しながらこう言った。
「…うーん。いろいろとっ散らかってるね。その感じだと、和佳菜、まだ何にも話してなかったの?」
「…ええ」
「蓮のこと。簡単に話せることじゃないって分かってるけどさ。それでも、和佳菜は悪くないんだから」
「でも、和佳菜はさっき蓮さんのこと、殺したって」
「事情があるの。そうだろ?和佳菜」
「…昌さんは、何もかも全て知っているの?」
「全部とは言い切れないかな。ホテル火災が起きたあの日のことを全て知っているのは、蓮と和佳菜。2人だけでしょ?」
本当はそれだけじゃない。
他にも真実を知っている人がいるの。
ただ、言えない状態に追い込まれているか。
それとも。
もう、一生言葉にできないか。
2択だ。
だから、真実は。
きっとあたしが語らない限りわからない。



