蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



あたしは何も言えなかった。


彼の言葉に、頷くことも、否定することも出来なかった。


この現実全てを受け止めることなんてできなかった。


ただ。


「…綾、聞きたいことがあるの」


あたしは聞きたい。


今黙って、何も語らないこの男。


目線を下げたまま、ひたすらにこの時が流れるの待つ男。


「蓮さんのこと話すんじゃなかったのかよ」


「…じゃあ、いいわ。選んで。今か、蓮のことを貴方が本当に知った後か」


「本当にって、俺が誤解でもしてたって言いたいわけ?」


「そうよ!…貴方は、蓮のこともみんなのことも誤解しているわ」


「…お前に何がわかる」


「え…?」


「もう、いい。お前が誤解してたっていう、その話聞かせてもらうよ」


あの時聞こえた、低い地を這うような声が。



きっと貴方の本質だったのね。



息を吸った。


これから話す蓮の話は。



綾も誰も、知らない話だ。



「蓮は獅獣15代目の総長であり、あたしの護衛のエリート。…彼は」



そう言った時、突然ドアが開いて。




「久しぶりだな」