「…あたしが蓮を殺したの」
忘れてはいけない。
あたしの罪。
「…和佳菜…なあ、どういうこと?…ねえ、ねえ!」
「ちゃんと説明するから!だから、…座って」
立ち上がったみんなを座らせて、あたしは深呼吸をした。
ずっとずっと裏切り者である人間の。
…最期の、役目だ。
「2年前、大手企業主催のパーティーにマークと共に呼ばれた」
まだ2年しか経っていないのか。
もっと長い年月が過ぎたと思っていたわ。
「本当は2人で行くはずだったの。だけど、マークは急に仕事が入ってしまって」
「ちょっと待て、結局そのマークってやつは何者なんだよ」
そういえば説明してなかったわ。
さすがね、悠人。
「Mark Steve。スタースプロジェクトの社長よ」
「スタースって…めっちゃ有名なゲーム会社じゃん。この前も新作出てたよね?俺買ったもん」
翔が興奮するのも無理はない。
対戦ゲームで当てたスタースプロジェクトは、それからも新作を次々と発表し、その度に話題になるゲーム会社だ。
「そうね。でも、それは表の顔。本業は、マリファナを売り捌く麻薬の販売組織の次期トップと言われる存在だった。隠れ蓑として、作った会社がいいゲーム当てちゃったのよ」
「マリファナ…」
「ものは知ってるよね?」
「伊達に生きてないからな。それくらいは」
綾がそう言うからあたしも頷く。
「名前だけで、実際は無いってこともあり得るのに」
「それは、万が一捜査の手が会社に伸びたとしても、上手く誤魔化せるようにしたかったからね。そっちはちゃんとしてると誤魔化しやすいの」
それで。と声を上げると、再び静かになった。
「あたしはマークと2人でパーティーに行く予定だった、ということまでは話したよね?」
「ああ」
「でも、それはマークに急な仕事が入ってしまい、叶わなかった。だけど、後から追いつくからと言われ、あたしは前日に一足先にマークが取っておいてくれていたホテルに一泊することになったの。
側近の蓮と一緒に」



