「だから、気安く名前呼んでんじゃねえ。…んで、なに?」
肌身離さず持ち歩いていたお守りみたいな存在のことを、彼に切り出した。
正直言って、持っていて当たり前すぎて忘れてた。
「このUSBメモリ。悠人なら、中身確認出来ると思って」
「…USB?和佳菜、それどうしたんだ」
仁も近寄って、みんなでUSBメモリを囲む。
「琢磨から貰ったの。あたし、コンピュータとか持ってないから、どうしようもなくて」
「USB移せるコードとかもあるけどな。…分かった、確認しとく。中身は俺が見てもいいわけ?」
「ええ、恥ずかしいものが入ってるわけではないと思うから、大丈夫よ」
「とか言って、恥ずかしいものが出て来たらどうすんだよ」
綾に似て心配症になってきたなあ、と思いながら、仁に言葉を返す。
「琢磨にそんな秘密は握られていないはずよ。彼が持っている恥ずかしいものと言えば」
何だろう、知られたくないものか。
真っ先に思い浮かぶのは、マークといた時の写真やビデオだけど、そういうものは彼の手には渡らないだろうし。
「…そうね、小さい頃の写真とかは恥ずかしいわね」
「確かに和佳菜の小さい頃って想像つかないかも」
「知ろうとしないで頂戴ね」
「…さあ?」
「ちょっと!」
「まあ、いいや。それなら今やったげる。丁度作業もキリがいいし。小さい頃の写真なら、スマホに移してあげる」
そうして、USBメモリを差し込むと。
「…ビンゴ」
悠人がニヤリと笑った。
「え?どういうこと?」
「和佳菜の小さい頃の写真だ」
あたしも慌てて、画面を覗き込む。
「ちょっと!…琢磨ったら、何でこんなもの残しておくのよ!」
あたしが8歳くらいの頃と思われる写真が沢山出ていた。
久しぶりに日本に連れて行ってもらった時だから、確かそのくらい。
「可愛いじゃん」
「やめてよ。この頃のあたしのどこが可愛いって?」
「え、ほんとのこと言っただけだけど?」
「もう!」
「ほら、痴話喧嘩してんじゃねえよ。スマホに移してやるから持ってこい」
彼がそう言ったから、あたしはすっかり舞い上がってしまった。
「本当?ありがとう、悠人」
「…だから、名前で呼ぶなって」
小さく何か聞こえたような気もするけれど、舞い上がっているあたしには何も聞こえない。
仁が肩をすくめていたのはなんとなくわかった。
「…何かあった?」
「いや、なんでも。スマホ取ってこいよ」
「ええ!そうするわ!」
有頂天のまま、あたしは部屋を出たのだった。



