蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



「だから、気安く名前呼んでんじゃねえ。…んで、なに?」


肌身離さず持ち歩いていたお守りみたいな存在のことを、彼に切り出した。


正直言って、持っていて当たり前すぎて忘れてた。


「このUSBメモリ。悠人なら、中身確認出来ると思って」


「…USB?和佳菜、それどうしたんだ」


仁も近寄って、みんなでUSBメモリを囲む。


「琢磨から貰ったの。あたし、コンピュータとか持ってないから、どうしようもなくて」


「USB移せるコードとかもあるけどな。…分かった、確認しとく。中身は俺が見てもいいわけ?」


「ええ、恥ずかしいものが入ってるわけではないと思うから、大丈夫よ」


「とか言って、恥ずかしいものが出て来たらどうすんだよ」


綾に似て心配症になってきたなあ、と思いながら、仁に言葉を返す。


「琢磨にそんな秘密は握られていないはずよ。彼が持っている恥ずかしいものと言えば」


何だろう、知られたくないものか。


真っ先に思い浮かぶのは、マークといた時の写真やビデオだけど、そういうものは彼の手には渡らないだろうし。


「…そうね、小さい頃の写真とかは恥ずかしいわね」


「確かに和佳菜の小さい頃って想像つかないかも」


「知ろうとしないで頂戴ね」


「…さあ?」


「ちょっと!」


「まあ、いいや。それなら今やったげる。丁度作業もキリがいいし。小さい頃の写真なら、スマホに移してあげる」


そうして、USBメモリを差し込むと。


「…ビンゴ」


悠人がニヤリと笑った。


「え?どういうこと?」


「和佳菜の小さい頃の写真だ」


あたしも慌てて、画面を覗き込む。


「ちょっと!…琢磨ったら、何でこんなもの残しておくのよ!」


あたしが8歳くらいの頃と思われる写真が沢山出ていた。


久しぶりに日本に連れて行ってもらった時だから、確かそのくらい。


「可愛いじゃん」


「やめてよ。この頃のあたしのどこが可愛いって?」


「え、ほんとのこと言っただけだけど?」


「もう!」


「ほら、痴話喧嘩してんじゃねえよ。スマホに移してやるから持ってこい」


彼がそう言ったから、あたしはすっかり舞い上がってしまった。


「本当?ありがとう、悠人」


「…だから、名前で呼ぶなって」


小さく何か聞こえたような気もするけれど、舞い上がっているあたしには何も聞こえない。


仁が肩をすくめていたのはなんとなくわかった。


「…何かあった?」


「いや、なんでも。スマホ取ってこいよ」


「ええ!そうするわ!」


有頂天のまま、あたしは部屋を出たのだった。