蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



最後の言葉が打たれたのは、この倉庫に襲撃が入った日の朝方。


5時28分。


「…これは」


「どう考えても、狙われてるだろ」


ええ、間違えないわね。


でも、何にしてもわからないことだらけだ。


白い仮面をした悪魔と、接点はほとんどない。


最初に白い仮面をした悪魔の話を聞いたのは、千夏ちゃんから。


マーク関係で探してほしいと頼まれたとのこと。


だけど直接接点はなくて。


でもさっき…。


『仁の母さん殺したやつだよ。…そいつが、』


綾はそう言っていた。


どうしてそう断言できたのだろう。


あやみさんからは仁のお母様を殺したのは、マークだと言っていた。


だけど、白い仮面をした悪魔がイコールマークにはならない。


だって、彼は死んでいる。


間違えようのない事実だ。


あたしこの目ではっきりと彼がしんでいるのも見たし。


ご家族の傷がとても深いことを知っている。


あれは演技じゃない。


あの家族と深く関わってきたんだ。


それくらいわかる。


ならば、答えは…。




「ねえ、っ綾」


「ん?」


たまらずに名を呼んだ。


振り返る彼を。


信じたい。


信じていたい。


まさか。



『てめえらの中に“裏切りもん”がおるからやよ』


嘘だと思っていた青山葏忢のあの言葉が本当なら。


「…なんでも、ない」


「はあ?あるからそう言うんだろ。言えよ」


「…綾、あのね」


「だからなに?」


「…目玉焼きにかけるのは、醤油派?それともソース派?」



「はああああ?」



ぷっ、と仁が吹き出した。


「え?この真剣な場でなに言い出すと思ったらそんなこと?」


「大事なことじゃない?あたしずっと考えていたの。ソースは合わないだろうって」


「いや、俺、ソース派なんだけど。なに言ってんの」


仁が隣でクスクス笑いながら


「どっちでもいーだろ」


って言うけれど。


「よくないの!」



と叫んだら、翔まで笑いだした。