蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



「んで?どーすんの。翔には任せないつもりだったんだけど」


「いやいや、やめてよ。俺だって、仲間があんな風になって黙ってらんないし、だいたいは親父との一件も片付いたし。俺にやれることはしたいよ」


「…どーする?仁」


チラリと仁の様子を伺う綾に、仁は毅然とした態度で答えた。


「やりたいならいいけど。でも無理しないように」


「だよね!よかったー!実際俺がいないとまわんないとこあるでしょ?」


「驕んなこのやろ」


「うわ、痛いって」


優しく拳で叩いた綾はなんだか少し笑顔が晴れていた。


自分のせいで、翔がああいう風になったって思ったのかもしれない。


「で、俺はどうしたらいいの?」


「お前は人脈が広いから、…“白い仮面を被った悪魔”のこと知ってるやつについて調べてもらいたい」


「…白い仮面を被った悪魔って。それって」


綾が言葉を続ける。


「仁の母さん殺したやつだよ。…そいつが、」


「今回も狙ったっていうの?どうしてそんな話に?」


「…和佳菜、寝てたっけ?ほら、俺らが話し合ってる時に白い仮面の男が…あ、あの時」


悠人が眠そうに口を挟む。


「和佳菜は翔を説得中だったはずだけど」


「…ん、ごめん」


すまなそうに頭を下げる綾を、軽くつつく。


「別にいいわ。その時、何を話してたの?」


「南と連絡取ってたっていう奴見つけた。それが、こいつ」


悠人がノートパソコンをこちらに見せてくれた。


画面に写っていたのは、メッセージアプリでの会話の一部。


「これ、どうやって」


「…南のデータ、復元しただけ」


「悠人、そんなこともできるの?すごいのね!」


「別に?…これは、にいちゃんに教えてもらったから」


「瑞樹が…。あいつも、そういうところがあるのね」


「まあ、あれをもっと応用しないと、今の技術には追いつかないんだけど。それより、ちゃんとこれ見て」


悠人が指を指したのは、相手側の名前。


「でぃあぶる…ぽーたんと…」





「“Diable portant un masque blanc”」




「…え?」


だけど、あたしは分かってしまった。


「…これはっ」


思わず目を見開いた。


「どうしたの?和佳菜」


怖い。


怖い。


どうして。


「分かったみたいだな」


仁がため息をついた理由がわかった。



「フランス語で…白い仮面をした悪魔」