「…和佳菜」
貴方は誰?
目眩のするようなぼんやりとした意識の中。
男の人に名を呼ばれた。
「…ごめん」
ぼんやりと焦点が合わないから、彼が誰だかわからない。
ただ、彼はひたすらに謝って。
「ごめん」
謝り続けている。
どうして謝るの?
貴方は誰なの?
あたしの声は声にならなくて、ただ空気となって消えていく。
「…ごめん、君は。…俺と一緒にいていけなかった」
一緒にいてはいけなかった?
どういうこと?
ヒントはたくさんあるはずなのに。
この聞き覚えのある声の主をどうしても思い出せない。
「ごめん、ごめん。たくさん、傷つけて、罪を負わせた。…全部俺のせいなんだ」
たくさん、傷つけて、罪を負わせた?
罪、罪って…。
まさか、貴方は。
「和佳菜!」