「おかえりなさい!」
倉庫のドアを開けると、みんなが一列になって待っていてくれた。
「ただいま。みんなは怪我はない?」
「はい!俺らはあとから来たんで」
そう言ったのは、あたしの帰国時に暴れる仁を止めてくれていた、男の子2人。
確か、名前は…。
「話すのは久々ね。慎太郎、三郷」
そういえば、慎太郎にじろっと嫌な目で見られた。
「やだな、和佳菜さん。高梨って呼んでくださいよ」
「ごめんね、ファーストネームの方が呼びやすいのよ。気をつけるわ」
慎太郎という名前にはコンプレックスがあるらしく、周りに高梨呼びを強要する無邪気な慎太郎と。
「光栄です」
言葉短くして微笑む、要領の良い頭脳派の三郷。
「行くぞ、お前ら。話は中でしろ」
仁があたしの手を引いて、3階の幹部室へと向かう。
彼らは後ろからちょこまか着いてきた。
「翔と綾は?」
「もう待機されています。悠人さんは捜査が終わり次第参加すると仰っていました」
「分かった」
辿り着いた先は勿論幹部室。
ドアを開けると綾と翔が立ち上がった。
「仁、和佳菜!これは一体どういうことなんだ。仲間が何人もやられたなんて」
綾の叫び声を無視して、仁はぱたんと戸を閉めた。
それから、王様は中央に、彼らは右端に座った。
「和佳菜」
そう彼は呼んで、あたしを膝の上に乗せた。
「おい!仁!無視しないで、ちゃんと答え…」
「どういうことだって聞きたいのはこっちの方なんだけど?」
ジロリと白い目で2人を睨んだ。
「は、はぁ?」
「今日、俺らにここを出るなんて言ってねえよな?」
和佳菜、聞いたか?
と問われたから、あたしは正直に首を横に振った。
綾も翔も、2人がここを空けるなんて話は聞いていない。
「後からのこのこやってきて、俺に吠えるなんて良い度胸してんじゃねえか」
「仁…!今、そんなことを言い争っている場合では…」
「いいや、これは今解決しなきゃいけねえ問題なんだよ、和佳菜」
仁の目は本気だった。
「前から隠れてコソコソ抜けやがってたのは知ってた。報告くらいしろって散々言ってきたのも分かってるよな。お前ら2人、一体どこに行ってたんだよ」
王様の怒りの炎は一度燃えてしまったらなかなか消せない。
分かっているから、あたしはもう口を挟まなかった。
これは彼らの問題だ。
あたしがいない時から知っている、1番近くにいる彼らの間の問題なんだ。
あたしが下手に首を突っ込んではいけない案件であることはよくわかる。
「俺らは…」
翔が悔しそうに唇を噛んだ。
それから前を向いて。
もう何もかも背負ったような顔で。
「仁の母さん、殺した人を探してたんだよ」