「久しぶりだね」
しばらくして、佐久間先生が奥から現れた。
「…貴方には会いたく無かったんですけどね」
仁は椅子から立ち上がって頭を下げたけれど、その顔は酷く歪んでいた。
思わず、佐久間先生も苦笑いした。
「…あー…まあ、あれはもう水に流して欲しいんだけど」
「和佳菜を追い詰めた過去は消えないので」
どうやらあたしに探りを入れたあの日のことをまだ怒っているらしい。
「仁、もういいわ。それより、佐久間先生。みんなは…?」
そうあたしが聞くと、彼はゆっくりと語りだす。
「…俺がやらなきゃいけないレベルの奴はみんな、一応は成功したよ。ただ、まだ麻酔が切れたからって言って目覚めるとも限らないし、記憶障害が残る可能性も否定できないよ」
頭に衝撃を与えられた人が多かった。
佐久間先生が手術を請け負わなければいけないくらい怪我が酷かったのは。
次期幹部と謳われる陽太と。
そして…。
「南は…南はどうなんですか?」
南。
彼が1番酷かったように思う。