蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



いつもは外まで大騒ぎする声が聞こえてくるのに、今は音ひとつ聞こえない。


「仁、連絡は?」


「…入ってねえけど」


出かけるなら、総長に連絡くらい寄越すはずだ。


その時。



「…なに、これ」


電灯に照らされて見えた地面にある塊は、一見すると、黒っぽくて分からない人もいると思うけれど。




『和佳菜…!君だけは逃げるんだ!』



あの日のことを、今でもハッキリと覚えている。


嗅いだことのある、この匂いの正体は。




「…血だ」



その横には、金色に光る弾が、潰れて落ちていた。



背筋が急に冷たくなった。


「…まさか」


走り出そうとしたあたしを。


「まてっ!」


仁が慌てて腕を掴んで止めた。


「なんで?早く行かないと!」


「敵が残ってるかもしれないだろ」


ああ、あたし、全く冷静じゃない。


その可能性は否定出来ないのに。


あたし達は銃は絶対に使わない。


だからこれは明らかに外部からのおそらく…。



本業の仕業だ。



「和佳菜…。お前はここに」


「ついて行くわ」


意思のある目をしても仁は首を横に振る。


「危険な目に遭わせたくねえんだよ」


「みんなだって危険な目に遭っているかもしれないのよ?黙って見ているなんて、耐えられない」


「和佳菜!敵がわかんねえんだよ!勘弁してくれ」


「あたしは………!」


駄目だ。


何かあったなんて思いたくないのに。


涙が今から出てしまうなんて、こんなことおかしいのに。


「…獅獣の姫よ」


だから、絶対に逃げたくないの。