「…純夏さん」
純夏さんは少し困ったように眉を寄せた。
「ごめんね。疑っているわけではないの。和佳菜ちゃんがいい子だってさっきちゃんと分かったから。でもね」
「やっぱり、…心配ですよね」
こくりと頷きながら、純夏さんが返す。
「…仁、子供の頃にお母さん亡くしてて、それからずっと、純夏のママや純夏がお母さんの代わりみたいなものだったの。我が子みたいに思ってると、さ。やっぱり…あの日の話を聞いておきたくて」
あの日がどの日のことか。
あたしはきちんと理解していた。
「純夏さん。…ちゃんとお話します。あたしのこと、マークのこと。
2年前のホテル火災のことを」
仁、ちゃんと話していなくてごめんね。
貴方は表向きの事実は知っているかもしれないけれど、言えなかったの。
だって本当のことは分からないはずだから。
あたしがどれだけ醜い人間か、貴方にだけは知られたくなったの。
あの日、マークとおじいさま。
そして、警察によって消された真実を。
あたしは今も、多分これからも、おそらく永遠に。
後悔し続けるしかない過去を。
「あたしはあの日。大切な側近の蓮を殺しました」