ここに来て、あたしは。


純夏さんが彼女ではない。


この人は本当に当麻さんしか愛していないことを正確に理解出来た。


「なんか食べてく?作るよ」


「いや、いい。和佳菜のこと紹介したかっただけだから」


「そんな堅苦しいこと言わないでさあ。今日はとーまはもう出ちゃうの」


「お前はさみしいから一緒にいて欲しいだけだろ」


仁の呆れた声に、純夏さんはくすりと笑う。


「あは、バレちゃった?うーんでも、ほら。和佳菜ちゃんともお喋りしたいの!仁も最近はこっちに顔出してくれないじゃない?ふたりの出会いとか知りたいし」


ふふと、笑って。


この人は柔らかい目でこちらをみた。


こんな闇の世界で生きていても綺麗で、華やかで、美しくて。


闇に飲まれない強い人。


あたしもそんな人になりたかった。



「和佳菜ちゃんはどうしたい?」


「え?」


あ、忘れていた。


ええと、今はここで夕飯をご馳走になるかの話で。


「…あたしは、是非食べてみたいです」


彼女はあたし達の話を聞き出そうとしたいようだけど。


あたしは純夏さんの話を聞いてみたかった。


どうしたらこんな風に強くて優しい女性になれるのか。


どのようにしてその強さを手にしたのか。