ああ、上手だ。


多くの人と出会って来たあたしは、そういう風にしか捉えられない。


この人は知っているんだ。


どう言えば、自分の願いが叶えられるのかを。


何故仁の周りってこんなに思慮深い女の人しかいないのだろう。


千夏ちゃんもなかなかの人だったし。


もちろん、千夏ちゃんと違ってこの人から悪意は感じない。


だけど、どこか含みのある顔をしているのは…。


「和佳菜ちゃん?大丈夫?」


改めて彼女を見ると、不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。


「…はい、なんでもないです」


「え、じゃ敬語やめよ?ね?」


クスクス笑う彼女に、うん、と笑う。


「…仁を、よろしくね?」


その笑顔を見て、あたしは納得したの。


どうしてどこか含みのある顔をしていたのか。


この人は見極めていたんだ。



あたしに仁を任せられるだけの人間性があるのか。



彼女は口にしないけれど、この世界に近い場にいたのなら、あたしが誰と付き合っていたのかくらい、きっと知っているはずだ。


だから、きっと、心配だった。


ならば、あたしのやることはひとつ。



「はい」


目を見て、貴女に訴えるだけだ。


彼女はあたしの目をじっと見つめると。


ふふ、と穏やかに笑った。


「いいこだね。仁、幸せになってね」


彼女は目を細めて笑い、あたし達を祝福してくれた。