「…!?」
何やってるの?
ここ、人の家の玄関なんだけど!
そうは思っても仁は止めてくれない。
「……んん、じ…ん」
「…黙っとけ」
え?なんで怒っているの?
その低い声を聞いてもあたしは思考が出来なくなっていく。
息を継ぐことで精一杯。
やっと離してもらったら。
「…っはぁ、……はぁ。仁っ何して」
「他の男をじぃっと見つめるお前が悪い」
「はあ?」
他の男というよりは夫婦よ、夫婦。
「お前は俺だけ見てればいいんだから」
「言われなくても貴方しか見えてないわよ」
かちっと固まる仁を置いて。
「中に入りましょうか」
と純夏さんが声をかけてくれた。
「はい、お邪魔します」
「…純夏は相変わらず仁くんに当たりが強いけど。まさか彼女さんまでそうなんて」
苦笑いを零した当麻さんは仁の肩を二度叩くと、行ってるぞ、と言ってあたし達と共に奥に入って来た。
仁がただひとり。
「…和佳菜」
顔を真っ赤にしている様子など、あたしは露も知らない。



