「ああっ、もう!中にいていいって言ったのに」
眼鏡をかけた、知的なイメージを持たせる男の人。
細身で、一重のせいで一見キツい印象を持ってしまうが、多分。
この人は怖くはない。
何故かこういうのは分かる。
彼女は、そのとーまさんに抱きついた。
「仁、紹介してないんだね。この人は、とーま。わたしの旦那さんなの!」
そう抱きつきながらこちらをみた。
「旦那さん…」
ぼんやりとその背の高い人を見上げる。
「初めまして。東屋 当麻です。さっき純夏がいきなり抱きついたみたいで、すみません」
「ちょっと!だめなの?」
「純夏の常識は何故か日本では通じないよね」
苦笑いする旦那さんも純夏さんの性格を心得ているようだった。
素敵なご夫婦だ。
出会って数秒で分かってしまうほど、素敵だった。
その時。
「和佳菜」
ぐいっと、なんとも強引に。
彼はあたしを引き寄せて。
キスした。



