「…琢磨、から?」
「そうよ」
目を見開いた彼は、USBメモリには決して触ろうとしない。
そして、あたしと目を合わせた。
その顔はなんだか…優しかった。
「これは…。和佳菜宛だよ」
「あたしに?」
だけど、琢磨は確かに瑞樹宛だと…。
「佐々木さんや、そこの監視カメラで見張っていたマークに怪しまれないためでしょ」
ああ、そういうこと。
瑞樹がギロリと睨みつけた部屋の隅には、防犯カメラがかかっている。
だけど、ここにそれを見るためのモニターは存在しない。
初めから分かっていたことだった。
あたしには自由なんてない。
いつでもあたしは彼の存在下にある。
マークの監視だと気づくにはそれほど時間は必要なかった。
誰も言ってくれなかったけれど、あたしはそれがマークに繋がるものだと分かっていた。
モニターがないことが最早証拠だった。
分かっていたからこそ、日常会話をすることを心掛けていたのだ。
「俺の仕事の一環の品だと言えば、安心して渡せるだろうからね」
琢磨は隠し事が昔から苦手だった。
素直な人間である彼は、初めから丁寧に嘘を仕込んでおかなければ対処できないタイプである。
その性格は十二分に把握していたから違和感は綺麗に消えた。
「琢磨の大事な贈り物だと思うから、悠人あたりに持っていけば、見せてくれると思う。大事にしときな」
そう言ってそっと、あたしに握らせてくれた。
「…ありがとう、瑞樹。やっぱり貴方ってやさしいひとなのね」
見開いてから、ハハと笑うと。
「べっつに?和佳菜がどう思ってようと、俺には関係ないし?」
「素直になりなさい、坊っちゃん。貴方は…」
「あーーーーー!うっさいうっさい!俺今、なんも聞こえなかったなあ」
「…どういうこと?」
「なんでもないから!ケータイ返してくれたし、もー行きなって」
焦っているのか、照れているのか、それとも風邪を引き出したのか、頬が赤い瑞樹を不思議に思いながら。
「…ありがとうね」
そう笑った。
「……幸せになりなよ」
まだどことなくギクシャクしている瑞樹に笑いながら。
「もうとっくに幸せよ!2人ともありがとう!さよなら!」
あたしはキャリーバッグを持って、Margaretを出たのだった。



