「俺もちゃんと聞けてなかったんだけどさ」
「なに?」
「マークとちゃんと話せたか?」
その目から心配する気持ちが見えた。
マークから解放された頃のあたし、おかしかったものね。
うん、その気持ちは分かる。
だけど大丈夫よ。
あの時とは違う。
今のあたしは冷静なの。
「うん、話すことができた。もう大丈夫」
あたしのことを想ってくれているあの人なら、あたしの今の思いだって伝わっているはずだから。
あたしはそう信じている。
あの人は永遠にあたしの恋人ではないけれど、それでも大切な人。
それに変わりはないと分かった。
「よかったな…」
「仁のお陰よ」
「俺はなんもしてねえよ」
「ううん、あたしが仁の元に行きたいって仁は強く思わせてくれたから」
「…は、なに。もっかい襲われたいわけ?」
「そうじゃなくて」
「拒否権なし」
その強くて大きな腕にあたしの身体は拘束されて。
「…いつまでも俺の側で笑ってて」
そう言って躊躇いもなく唇を塞いだ。



