「行ってきます!」
それから結局2時間後。
あたしの支度が遅かったというより、仁がのんびりしていたせいで、出発が遅れた。
あまりに遅いので、あたしも決心して。
「仁行かなくていいよ」
と言って、1人で行こうとすれば止められるし。
力づくでいこうと挑もうとすれば、キスされて力を抜かれた。
もう駄目だ、と負けを認めたあたしは仁の支度が終わるまで待ち、そうして2時間後。
ようやく支度が終了したのだった。
「もう仁とは一緒に出かけない」
「なんだって?」
「なんでもないわ…」
瑞樹になんと言われるか、不安でしょうがない。
泥棒猫でも言われるだろうか。
覚悟はしておかないと。
今日は車で行くらしい。
菅谷さんにも久しぶりに会って、よろしくお願いします、と口にした。
「そういえば、昨日陽太に言われた言葉で引っかかってることがあるの」
乗って少し経って、話だしたのはあたしから。
「なんだ?」
「『行ってみても貴女の部屋の電気はついてない』って言われて。仁ってあたしの部屋に来ているの?あたし、あれ以来会ったことはないのだけど」
あたしが仁とあの部屋で会ったのは、千夏ちゃんに会いに行く時だけ。
用事なんて特になかったはずなのだけど。
「…陽太、後でぶっ潰す」
「ぶっ潰す前に教えて。知らないことがあるのは怖いわ」
仁はため息をついてから、白状した。
「お前の部屋に毎日行ってたんだ」



