蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



その温もりで誰なのか理解する。


「仁?どうしたの?」


力だけが強くなる。


「…いなくなったかと思った」


「え?」


「起きたらいなくなってて。あれが夢だったんじゃねえか、って思って」


仁の手にそっとあたしの手を重ねると、その手はブルブルと震えている。


…あの大声って、もしかして。


「…勝手にどっか行かないでくれ」


ふと見ると、壊れた椅子や傷のついた机が転がっている。


貴方が不安になって、暴れたって、そういうことらしい。


「ねえ、仁。机の上の置き手紙ちゃんと読んだ?」


「…置き手紙?」


「そうよ。“ご飯を食べてきます”って書いてあるの。読みにくいけれど、読めるはずよ」


あれで日本の高校の試験を受けていたのだから。


読めてもらわなければ困る。


「……」


「あら、読んでなかった?なら一緒に取りに行きましょう?ちゃんと読んでね」


それからくるりと彼の腕の中で回転して。


「じーんっ?」


あたしから抱きつく。


「…んだよ」


「言ったでしょう?あたしはここにいる。どこにもいったりしない。大丈夫。ずっと側にいるよ」


離れていく恐怖が、貴方にはあるのね。


千夏ちゃんは黙っていなくなったって言っていたし。


黙って消えてしまうのが怖いのね。


あたしも気をつけなければいけないわ。


「…いなくならねえか?」


「ええ」


「ぜったいに?」


「絶対に」


大丈夫だよ、仁。



あたしだってもう。


貴方以外と共にいる気はないから。