振り返った彼女は、にんまりと笑った。
「あれ、盗み聞き?趣味悪いねえ」
「気分を悪くさせたのなら、ごめんなさい。でも安心して。内容は聞いていないから」
どうやら、彼女は誘いに乗ったと思ったらしい。
勘違いも甚だしいが。
「ええ?声が聞こえたってことは、内容も入っているんじゃないの?矛盾してるよー」
「話し声は聞こえたけれど、壁を挟んでいるから。よく分からなかったの。それともなあに?聞いてほしかったとか?」
彼女は顔を下に向けると、グッと押し黙った。
「そんなわけないじゃない…!」
「そう。なら、いいわね。あたしは聞いていなかったし、一件落着ね」
あたしに鎌をかけるなんて、まだまだ無理なのよ。
そんな意味も込めてニッコリと微笑んだ。