「和佳菜、おはよう」
そう声をかけてきたのは、上の階から降りてきた翔。
仁を除く幹部の部屋はみな3階にあるからね。
「おはよう翔。おひさしぶりね」
「大阪で会ってるから、久しぶり感は薄いけど。でも久しぶりだね。アメリカ行ってたんだってね、どーだった?」
「どう、って言われても。あまり外には出なかったから、観光らしきことはしていないけど。楽しかったし、色んなことを学べて良い機会だったと思うわ」
「えー?1週間もいたんでしょ?外でないで何してたの?」
「勉強」
「…ほんと、和佳菜って勉強好きだよね。俺には理解できないや」
ため息をついた翔には、あたしも苦笑いするしかない。
あたしから考えたら、なんでこんなに楽しいものをやらないのか、謎しか生まれないけれど。
「飯食う?」
「うん、お腹が空いたから上ってきたの」
「んじゃ作る。何がいい?」
「…料理できるの?」
前に泊まった時は確か綾が包丁を握っていたはずなんだけど。
「うちは当番制なの。今週は俺が朝飯担当。料理番の飯食わねえ奴は適当に食べる」
…初めて知った。
いっときここにいたことが多かったはずなのに。
「んで?何がいい?」
そう聞かれて、パッと思いついたのは。
「オムライス」



