「ねえ、綾。どういうことなの?この子に何を話しているの?話が見えないんだけど」


「…いや、え?俺も話が見えないんだけど」


みんなでキョトンとしてしまって、話が進展しない。


「だから、夢があたしが戻るって言うの。何故?というかどこに?って聞きたいの!」


あたしが冷静に説明をする羽目になった。


何故あたしは朝から頭をこんなに働かせなければならないのだろう。



「何故って、そりゃ全部終わったし。マーク様に支配されなくてもいいだろ。てか、お前が戻る場所がここ以外にあんの?」



…それは、そうですけれども。


「…あ、でも。あたし、荷物も向こうにあるし。何より…」


ふと、思い出したものがあった。


「なにより?」


「瑞樹の携帯電話。まだ持っているままなの。返さないと」


地下に置いてあるから、多分電波は通じていないだろうけど、多くの瑞樹宛のメールや着信が入っているはずだ。


彼の仕事は携帯電話がないと成り立たないものだから、早く返さないと。



「…んじゃ、ついでに物とか持ってくればいいんじゃね?ちゃんと挨拶すれば瑞樹さん達も何も言わないでしょ」


なんか、無駄が無くて何も言えない。


綾相手だし、何かしらの反論はしたいところなんだけど生憎何も思い浮かばないのだ。


「もしかして迷ってんの?お前のことなんてだいぶ前からみとめてるっての」


ついでに心の蟠りまで忘れさせてくれたので、もう何も言えなくなった。


「…うん、じゃあそうしよう」


あたしは頷くほかなく。



夢はそんなあたしの苦い顔を見てケラケラ笑っていたのであった。