「…和佳菜、教えて?」
「何を?」
ほんとうはぜんぶしってた。
「和佳菜が何を見たのか、何を知ってるのか」
「…なんで?」
ほんとうはぜんぶわかってた。
「和佳菜のことをちゃんと理解したい。あのひとが誰なのかもわかんねえし、ちゃんと知りたい」
貴方が真っ直ぐな人ってことも。
貴方が決めたら曲げない人ってことも。
だけどあたしは知らないふりをして。
何をって、なんでって、聞いたのよ。
だって確証が欲しかったから。
あたししかみえてないって、分かりたかったから。
貴方はあたしの望み通りに。
あたしを引き寄せて起き上がらせて。
それから改めて、あたしの目を見て。
「教えて。和佳菜は何にそんなに辛くなってるの?」
そうした仁は誰よりもあたしのことを知りたかってくれた。



