唇を塞いだ途端に。


あたしの景色は色鮮やかになった。



「俺のモノになってくれるわけ?」


妖艶に貴方が微笑んだ。


「なってあげる」


だから、あたしも綺麗な笑顔を返してあげる。


器用じゃなくてごめんね。


こんな上から目線でしかものをいえなくてごめんね。


だけど想いは少しも変わらないから。


側にいて。


それは、多分。


こちらのセリフ。



「…んっ…」


啄むようにあたしの唇を吸って。


余裕なんて全くなくて。


全てを貴方に集中して、頭は貴方でいっぱい。


「俺以外見ないで。誰も視界に入れないで」


あたしは息絶え絶えになっているのに、仁は涼しい顔をして、息を継ぐ間にそういう。


「…っ、はぁ…」


足りない。


足りない。


足りないの。


そんなあたしはもう、とっくに。



「じんしかみえてないよ…」



貴方にあたしは溺れているの。