この部屋は見慣れない。


なんせ最後の来たのだって、何ヶ月も前の話だから。


だけどここで仁が生活しているのは感じた。


「家には帰らないの?」


「最近はこっちが多いな。瑞樹さんもいるし、あやみとかが近況報告してくれるから、いなくてもやってける」


「帰りたいとは思わないの?」


「俺の居場所は高校を卒業するまではここなんだ。厄介な連中との話し合いも終わったし、組と進んで関わりたいってわけじゃない。俺らのいる意義のある地域として、獅獣は存在し続ける」


あたしが仁と出会った頃、仁は忙しくて殆ど倉庫に顔を出さなかった。


多分厄介な連中が相手だったのだろう。


「仁」


その目があった瞬間。



「…和佳菜」



仁の声色が変わった。


「なに?」


「今までどこにいたんだ」


その責めるような言いよう。


陽太にも同じことをされた。


「アメリカ」


「なんで」


「マークが…」


「マーク?」


怪訝そうな仁の声と同時にマークが眠っている姿を思いだした。


声が震える。


「…知らないの?あの人死んだのよ」