「寝たふりをしていてもいい?」
「なんで?」
「今は一部のメンバーしかいないでしょう?話は全員の前でしたほうがいいと思って」
「それは建前だろ。本音は?」
何故しっかりと見破られているのだろう。
「…怖いの」
どうしたらいいのか。
彼らに追い出されたわけではない。
理解はしている。
だけどそれが必ずしも、わかっているに繋がるとは限らないのだ。
「何が怖い?」
「みんなが本当にどう思っているのかが分からない」
あれを建前だと感じてしまうのは仕方がないと思って欲しい。
「本音が見えないって?」
「優しすぎて、それが」
本当のことなのか、疑ってしまうあたしが嫌だった。
「じゃあ今は寝たふりしてていいよ」
仁の声音は優しかった。
「…いいの?」
「ん。その代わり、ちゃんと話そう。あいつらだって何も思ってないわけじゃないと俺だって思うけど。でも」
仁が息を吸った。
そしてあたしの目見て。
_________________ゆるく、笑った。
「きっと、大丈夫」
「総長!」
叫び声が聞こえる。
下っぱの子だろう。
聞き慣れない声だから、あたしがいない間に来た人なのかもしれない。
人が駆け寄る音に反射的に体を小さく固めた。
仁の腕に力が入って、少し驚いた。
「なにもなくて良かったです」
ハキハキと明るい声が聞こえた。
寝たフリは目の前が真っ暗で落ちつかない。
ひとりソワソワする中、仁が小さくしぃと言った息つかいを感じた。
「…こいつ、寝てるから」
「あ、すんません」
「血ぃ付いてるし、こいつも寝かせてくる。今日は外に出ないつもりだから、なんかあったら綾によろしく」
「あ、その綾さんが、無事終わったって」
そのことで何のことかあたしも仁も理解した。
「ん、りょーかい。綾が帰ってきたら繋いで」
「りょーかいっす」
その声はそれきり遠ざかって。
「…もう大丈夫」
仁の声でやっと目を開けた。