「…訳わかんねえ」


「うん、でも帰ろう」


「もっと言ってること分かんねえよ。けど」


ぐんと、2人の距離が近くなる。


「お前さえ手に入るなら、なんだっていいよ」


そう言って殴られた男のシャツをあっさり離して、彼女を抱き上げた。


「仁っ?いきなり何して!」


「しらね」


「ちょっと!」


「行くぞ」


「ちょっと!どこに?」



「倉庫」


んもう…、と彼女は唇を尖らせると。


「早く歩いてね」


仁さんの頬をつつきながら、そう言った。


「…りょーかい」


そう言いつつも、のんびりとした足取りで歩いていく。


隣を過ぎる時。


「…あと頼む」


俺の耳元でそう言った。


ほんと、この人は。



「分かってます、総長。お任せください」



うまく収めてみせますから。



生憎、尻拭いは得意分野なんでね。




俺はひとり、そう呟いた。