「仁さんやめてくださいよ」


「…うるせえ」


「ただでさえべらぼうに強いのに、これ以上重傷者出せば、さすがのサツも黙ってませんって!」


冷静な高梨と対照的な総長。


話を聞いてくれる気はゼロ。


さっきからずっとこんなのだ。


正直野次馬も多くて、サツが来そうで怖いから、45分も待ってられないんだけど。


でも誰が止めても止まんねえし。


高梨が怪我相手の顔を見て、ギョッとしたように目を見開いた。


「仁さん!まずいですって!」


それからさらに大きな声で止め始めた。


…なんだ?


「…にしても、あいつ長く殴られてるよな」


三郷がボソリと呟くので、標的を見ると。


「確かに。変わってない」


普通は長くても20分も殴られてることはないんだけど、こいつは少なくとも30分以上はやられてる。


高梨がマジで慌ててる理由がわかった。


「やっば、あいつ死ぬぞ!」


既に意識はない。


無抵抗なのに、総長がターゲットを変える気配はない。


「仁さんっ!ヤバイですって!ほんとに!」


俺も三郷も慌てて声を上げるけど、返事さえ返ってこない。


どうして冷静さが消えた?


なんのスイッチが入った?


とにかく止めるしかない。


「仁さん!」


高梨が手を掴む。


ぐるりと手を捻られて、投げ飛ばされた。


「仁さん!!」


俺も加勢する。


やるしかない、綾さんたちは来れないし、俺らしか…。





「仁」