《陽太side》
発作的にあんなこと言っちゃったけど、和佳菜さんに怒られるかな?
いや、どっちかというと冷静になった仁さんにかも。
だけど仁さんがあんなに荒れる理由はわかる気がする。
誰にも渡したくないって、本人が言っていなくても、なんていうんだろう、溢れるオーラ。
最初出会った時は震えたな。
総長の我がものっていうか、所有物感が半端なかった。
そうだよなあ、可哀想って言ってくる女なんて仁さんの周りにはいなかったろうしな。
新鮮すぎてなんか気になるのは、なんとなくわかる。
でも俺は、最初その話聞いた時目ん玉飛び出るかと思ったけどね。
怒ったらマジで手ェつけられないのに、思ったこと容赦なく言うやべえやついるって、思ってた。
実際には全然そんなことなくて(いや、あったけど)誰にでも優しくて、ちょっと頭硬いけど、よく笑う優しいひとだった。
何よりめっちゃ綺麗だし。
和佳菜さんと同い年の高2の人だって、あんなに綺麗じゃないと思う。
同世代は大人になろうと必死感漂ってるけど、あのひとは大人なんだ。
…仁さんの彼女じゃなかったら、みんな狙ってたろうな。
そうじゃなくても狙ってるやつ多そうだけど、総長があんな感じだから、決して表には出さない。
まあ、俺もそのひとりなんだけど。
「あのひと知らないんだろうなあ。仁さんが毎日Margaretまで来てるの」
部下とかに見に行かせるんじゃなくて、必ず自分で。
いつも同じ時刻に抜けるから、なんでかと思って聞いてみたら、翔さんがこっそり教えてくれた。
『窓の灯りが燈ってるか確認すんだって。ほんと、一歩間違えればストーカーだよな』
冗談抜きで本当にそうだと思うし、むしろもうストーカーなんじゃないかって思うけど、それくらい和佳菜さんへの執着がある。
だから、和佳菜さんがあの部屋にいないって知ったのも必然的だったんだ。



