蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



先導してくれた瑞樹は、タクシー停車場で止まり一台のタクシーに声をかけてくれていた。


「瑞樹!ロンスターダント街まで飛ばして何分かかるか聞いて!」


そう叫んでから、耳元に再び携帯電話を当てた。


「日本の警察ってどのくらいで来るの?」


〈俺の経験値からすると、早くて4、5分。遅くても10分以内には来ます〉


初期捜査早いのね、ってそうじゃなくて!



「早いわね…。それなら、」




〈もっとでかいヤツ、起こせばいいんじゃない?〉





耳から聴こえてきたのは、陽太の声ではなかった。


「貴方は…」


〈帰国早々にお疲れ様だね、和佳菜チャン〉


ふふっと、少年みたいに笑うひとをあたしは1人しか知らない。


尼崎 彗汰(あまがさきけいた)…」


〈感動の再会に呼び捨てはないんじゃないの?ま、いいけどね〉


「なんで、知って…」


〈たまたまここ通ったら、めちゃひとだかり出来てるじゃん?見てみたら、殴ってるの仁だし。高梨(たかなし)止めてるけど、意味ないし。三郷(みさと)に話聞いたら、普通にやばい状況だし。んで、陽太が和佳菜と話し合ってるって聞いたから、こっちに来たわけ〉


そういう意味ではないんだけど。


なんであたしが帰国したってこの人知ってるの?


なんて、今の尼崎 彗汰には戯言だろう。


彼は今、仁を止めることしか頭にないのだろうから。




高梨も、三郷も、次期幹部だ。


彼らもまた仁を止めようとしてくれているんだろうな。


にひひ、と笑った彼は、耳の奥で。



〈ひっさびさに、暴れちゃおうかなあ〉




ゆるりと笑ったその顔が_______見えた気がした。