その瞬間、あたしは瑞樹から携帯電話を奪い取った。


「陽太?その場の説明をもう一度丁寧にお願い」


〈えっ!和佳菜さん、そこにいらっしゃるなら…〉


「いいから、ね?早く。仁は誰かに危害を加えているの?」


〈ええと、今複数人の男を嬲り殺そうとしてます〉


一瞬絶句した。


「…まずいわね。それはどこで起きている?ロンスターダント街?」


〈…え、あ、はい。南側です。crowdっていう店の前で…〉


「その殴られている人は、まだもちそう?それとももう死んでいる?」


〈ギャラリーが多くて、分かんないんですけど、唸る声は聞こえるんで、生きてはいると思います。ただ長い時間殴られてるんで、そろそろ…〉


「止められる人はいないの?…そう、綾や翔は?」


〈それが…丁度、起こるちょっと前にウチのシマで珍しくトラブルが起きてて。派手なやつだったんで、2人とも行っちゃったんです。だから、周りにはしたの奴らしかいなくて〉


「綾には相談した?」


〈あ、はい!したら、和佳菜たちに電話しろって、いい加減連絡してもいいだろうからって〉


その感じだと余程手を離せないらしい。


「貴方たち次期幹部には難しい案件かしら?」


〈今、そのひとりが必死で止めてます。止めてますけど…効果はない、です…〉


だよなあ、と考えながら瑞樹に目配せする。


彼は昔から理解が早い。


仕方ないなあ、と呟きながらあたしと彼自身の荷物を持ってあたしを先導してくれた。


こういうことは長い付き合いだからできることだ。


「今からそっちに向かおうと思うんだけど、正直時間がかかるから、なんとか時間稼ぎかできないかな?」


〈いや、和佳菜さん。時間稼ぎってより、寧ろあそこから早くでなきゃいけなくて〉


「どういうこと?」


〈でかい規模の喧嘩なんで、いつも見て見ぬふりするロンスターダント街の人達もひびっちゃって。警察、呼んじゃったみたいで〉



…余計にまずいんだけど。