「いいらしいですよ」
「え、あれっていいって言う意味なの?」
「仁さんなのでね。はっきりとはいってくれないんですけど、そういうことだと思いますよ」
やっぱり仁はよく分からない。
だからこそ、知りたくなる。
あの暗い瞳で一体何を見ているのか。
真っ黒に沈んだ瞳で頭で一体何を考えているのか。
あたしは知りたくてたまらないんだ。
1年が生んでしまった穴を。
埋めたいと思うのはあたしだけ?
「和佳菜さんがきてくれて良かった」
陽太があたしに輝いた瞳を見せる。
「どうしたの、いきなり」
「俺、あの人苦手なんです。…ああ、いや、嫌いなんです」
あの人…とは。
「……千夏さんのこと?」
そう聞くと、陽太は曖昧に笑った。
「まあ、そうですね。なんだか、人のことを見下している気がして」
分からないでもない。
あの高圧的な態度は、あたしもなんだか苦手だ。
と言っても、まだ数えるほどしか話していないけど。
『和佳菜さんには、救護室を掃除してもらいますね』
陽太にそう言われて、二階にある救護室にやってきたはいいものの。
「…だから!………、…なの!」
声がするのは気のせいではないだろう。
それもなかなか激しい言い争いが。