[後悔しているんです]
アランの声が空気に消える。
[マークに新しい任務をさせなかったらって]
[アラン様…]
[他人を殺すことに罪悪感は感じません。使えないやつは葬るし、邪魔な人間は殺す。私達の世界がそういったことでできているのは貴女も存知しているでしょう。だけど…妻と息子…私の家族だけは]
[アラン様]
あたしは呼ぶ。
[あたしにとってマークは誰よりも大切な人でした]
この気持ちは哀れみだけじゃなかったんだ。
ポタンと、目から落ちた滴を見つめながら、そっとマークの肩に触れた。
[アラン様はさっき、後悔している。そう仰いましたけど、アラン様のお気持ち、マークは正確に受け取っていたように感じます]
[え…]
[マークのことを大好きだったあたしだから、胸を張って言えます。マークは本当に貴方を尊敬していました]
アランが泣いたのはその時だったと思う。
決して泣かない貴方が。
[そう、…ですか。そうだったらいいんですけどね]
穏やかに笑うアランは見ていてとても痛々しかったけれども。
[ありがとう…]
そうとだけ言って。
[あとは2人で。私がいると言いづらいこともあるだろうしね]
涙を拭いながら、そう言って出ていった。
「少しでも進めるといいな」
あの人も、前に。
残されたのは、あたしと、眠り続けるマークだけ。
[責めたら良かったのに。そうじゃないって、真実は違うんだって]
マークの顔に触れる。
冷たい。
冷たくて、冷たくて、たまらない。
[マーク…ごめんなさい。貴方のせいにしてずっと憎んでいたの。貴方だけのせいにすればあたしは楽だったの]
涙が頬を伝う。
後からともなく溢れ出る。
止まらない、止められない。
貴方は…どんな気持ちで眠っているのでしょうか。
貴方はどんな思いであたしのそばにいたのでしょうか。
この消えない罪を、どう償ったら良いのでしょうか。
[ごめんなさい…]
返答なんか返って来ない。
あたしが泣くことは絶対におかしい。
分かっていても、涙が止まる気配はなかった。



