「和佳菜さん!」
後ろからした声に若干驚いた。
そして、そのまま振り返りながら。
「驚いたよ、陽太。あたしを驚かせるのが好きなの?」
彼にそう、声をかける。
「全然驚いてるかんじしないんですけど。ま、そんなことはいいです。ちょっと遠いホテルが取れたので、行きましょうか」
「え、あたし、掃除しないの?」
あたしの驚いた声に、逆に陽太が驚いたようで。
「何言ってるんですか。姫さまに掃除させる族がどこにいるんですか。お姫様はゆっくりしていてください」
陽太は微笑んだけれど。
「いや!やる!」
「え?」
「あたしが住むのに、何故あたしが掃除しないの?自分のことなんだからせめて、あたしがこれから使う部屋くらい掃除したい」
あたしはあたしの行動に責任を持たなければいけない。
あたしが威張り腐っていたら、この族が威張ってしまう。
この地域だけとはいえ、No.1が威張っていたらすぐに潰されてしまう。
男の集団に女1人は目立つ。
目立つからこそ、手本になるくらいの気持ちでいなければいけないと、あたしは思う。
陽太はクスッと笑ってから。
「ですって、仁さん。どうします?お姫様のご希望は叶えますか?」
上に向かって声をかけた。
あたしも習うようにして、上を見上げると、仁があたし達はギャラリーから見下ろしている。
「好きにしろ」
仁は吐き捨てるように、そう言ってから姿を消した。